座談会
PLANOYAMAプラットフォーム(POP) 阿久津治(阿久津産業(株)代表取締役) ×飯野佳昭((株)グレイド代表)×小林千恵(ピクニックマルシェ実行委員会)×福本佳之((株)Vi Pass代表取締役)×渡邉正道(友井タクシー有限会社専務取締役)
小山市市役所 渡邊賢二(まちづくり推進課まちなか再生推進係長)×中村英慈(まちづくり推進課まちなか再生推進係)×田中雅人(まちづくり推進課まちなか再生推進係)×関高弥(まちづくり推進課長)×須郷幹雄(都市整備部長)
聞き手 嶋田洋平(らいおん建築事務所)
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ーーPLAN OYAMA(プランオヤマ)のここを見て! お気に入りのまちの風景
嶋田 アンケートやワークショップを行って、その意見を反映するかたちでPLAN OYAMA(プランオヤマ)という夢のある、かつ具体的なまちの像を見据えた提案がまとまりました。この中で、さまざまな場所をエリア分けし、場所ごとにどのようにしていきたいかを具体的なイメージとして描いているのですが、皆さんのそれぞれに気に入っている場所と期待したいと思っていることを聞かせてください。まずPLAN OYAMAプラットフォーム(以下、P.O.P.)の皆さんお願いします。
渡邉(P) 私は「小山駅西口広場エリア」の提案が気に入っています。自分が交通事業をやっていることもあり、ロータリーの使い方についてはずっと注目してきたのですが、今回の提案では歩行者が楽しく歩ける駅前とし、車がアクセスする道を減らしているものの、タクシーとバスが駅の近くに行くことさえできれば、すべての車が駅前にべったり停車できるようにする必要はないのではないかと思い、思い切った計画ですが、他の駅前ロータリーにはない新しい駅前像を提案したものになっていると期待しています。こうあるべきというより、こんな駅前があったら単純に素敵だなと思います。
嶋田 ありがとうございます。では小林さん。
小林 私は「祇園城通りエリア」の計画が好きです。駅周辺から思川にかけて歩くのがあまり好きではなかったのですが、ここ最近はだんだん町が変わってきて、知り合いが増えたりお店も増えたりして歩くのが楽しくなってきました。その先の「城山公園」も新しく変わろうとしているので、楽しく歩ける道のりが長くなるのは嬉しいです。
嶋田 歩くのが楽しい、移動する道のりを楽しめるのはよいですね。
小林 そうですね。以前は歩いていても殺風景で人と出会うということもなかったのですが、今はだんだんお店が増えていて近所の人たちも外に出て来ているのか、「こんにちは」と声をかけ合う機会が多くなった気がします。自分が知り合いが増えたこともあるのかもしれませんが、声をかけ合えるまちってよいなと感じています。
嶋田 ハードとしての設えも大事ですが、挨拶ができる、顔の見える関係ができるというのもまちづくりの大事なひとつということですね。素敵なご意見ありがとうございます。飯野さんお願いします。
飯野 自分は「駅東公園エリア」と「城東公園エリア」、駅東側2、3km離れた場所が面白いエリアになる提案に期待しています。ここも同じく、現在は歩いていても楽しくないです。でも、魅力的な場所をつくって新たなお店ができたり施設ができたりしたら発展していくと思いますし、地元の人たちもとても喜ぶように思います。
嶋田 人が歩く通りに面してお店ができてくるとよいですよね。
飯野 この通りは白鴎大学に通学する学生さんたちが行き来するので、そこを起点に城東まで歩いてくれたらよいなと思います。彼らが立ち寄れるお店などができて、エリアとして盛り上がる場所づくりができる可能性を感じています。
嶋田 空き家のリノベーションなどをしてもらえたらよいかもしれません。
福本 僕は場所ということよりも、まとめられた「EvolvingGoalsを達成する111のプロジェクト」に期待しています。
これは、市民アンケートを基に委員にさらにつっこんだアンケートを行ってまちづくりの優先順位や実現可能性の高いもの低いもの、あとはすでに行政で動いているものなどを書き出したものになります。
PLAN OYAMAの内容をベースにまとめていますが、PLAN OYAMAだけがまちをつくるわけではないと思うんです。
阿久津さんもおっしゃっていましたが、われわれだけが主役ではなく、今まで何かしか取り組んできた方や頑張ってきた方たちとうまく連携をしていきたい。なので今進んでいることもひっくるめて情報をまとめています。着手したり完成したら丸をつけていって、そうすることで何がどのように進んでいるのかみんなが分かりやすく、人に伝えるうえでも共有しやすくなっています。市民の人たちとも共有をして、みんなの夢が徐々に実現していくことを感じてもらえたら、官民が一緒にやる意味があるのだと分かってもらえるのではないでしょうか。
こういった情報の統合やわかりやすい共有言語は必要なのだと思うので、ここの内容が好きです。
嶋田 「EvolvingGoals」というネーミング、定まったゴールではなく、ゴール自体も成長してよりよいものにしていくという意味が込められている表現ですよね。これだけの数のプロジェクトが載っていること自体もすごいなと思いました。
阿久津 私は個人的な思いもあって、小山駅に接続する小山の再開発ビル第一号である商業施設ロブレをコアとする「ロブレエリア」の未来を挙げます。これいちばん手がつけられないし、どうしたらよいかもなかなか簡単に答えが見つからない難しいエリアだなと思っているのであえて選びました。地権者という立場もあるので、何か元気な場所になってほしいという気持ちも強いです。
ロブレは駅前のシンボルでもありますが、なくすという選択肢も含めてどんなことがここの未来に繋がるのか、いつか手をつけなければいけない場所です。まち全体がこれからどんどん変化・成長していくことになる中で、それをさまざまに俯瞰しながら準備をしておかなければいけないなと思いました。
あともうひとつは「思川エリア」ですね。駅から徒歩10分程度で、あれだけの豊かな自然と美しい景色が広がるまちはなかなかないので、この場所は小山市最大の魅力といってもよいと思います。そしてまちはここに繋がるエリアで構成されていることにもなるので、この場所に至るまでの魅力をどのようにつくり上げていけるのか、思川の魅力を活かし、小山という場所を自他に愛してもらえるようにしていくことが大切だと思います。
嶋田 僕も思川とロブレはふたつの大きな核だと思っています。アメリカなどのまちづくりは地権者の皆さんと一緒にやるのが当たり前のようなのですが、日本の場合は団体とか、そこで商いをしている人たちが中心になってしまう。僕は阿久津さんや渡邊さんのような地権者の皆さんが関わってくださり、一緒にまちづくりをしてくれることは素晴らしいことだなと思っています。小山市役所の皆さんはいかがですか?
中村 いちばんハレーションがあったと思うのですが、私がいちばん期待しているのは「小山駅西口広場エリア」です。私はまちなかから少し離れたところに住んでいるのですが、自家用車を持っておらず、また普段も車はあまり使っていません。市役所に来るにも電車を使っていますが、とても歩きづらい駅前広場です。また印象に残るものが何もない駅前で、外から人を呼んだ時も誇れるような玄関口ではないなとずっと思ってました。PLAN OYAMAで計画したように、歩行者中心となり緑溢れる駅前になると、栃木県内だけでなく周辺の自治体でもこういった駅前はないと思うので、誇れる地元になるように思いました。
嶋田 西口は車を離れたところに回して、広場を歩く空間に変えていこうという計画ですよね。ありがとうございます。
須郷 私は駅からこんな近くに素敵な川の風景があるという意味で、それを活かした「思川エリア」の提案が大好きです。
渡邊(C) 私は「祇園城通りエリア」の提案が好きですね。絵的には歩行者天国のイメージを描いているのですが、これができるようになったら完成じゃないでしょうか。それぐらいの賑わいをつくりたいと思っています。
関 私はどれも好きですが、東口の担当を10年やっているので、東口に思いがあります。緑化はやりたくてもなかなかできなかったのですが、このようにイメージが一体となってどう緑化していくとよいのかを皆さんに伝えることができると、また一歩その道筋が見えてくるように思いました。
嶋田 ひとつお聞きしたいのですが、市民の皆さんにアンケートをとって、それを委員の皆さんがブラッシュアップしてPLAN OYAMAというかたちにしたのですが、こういった手法についてネガティブな意見も出たりしていたと思うんです。それに対してはどのように向き合われたのでしょうか。何かをやろうとする時は必ずしもポジティブな方ばかりでないのは普通なことなのですが、ネガティブに捉えられてしまったことに対してどう対処するかはすごく大切だと思います。
渡邊 行政計画として発信すると、必ずこのビジョンのとおりにすると捉えられてしまいます。そのため、市役所の思いも載せながら、官民連携でやっているということ、とにかく多くの皆さんの意見を反映してまちづくりをしていくのだと。そのことを伝えることを徹底しました。丁寧に伝えていくこと、それに尽きるかなと思います。
嶋田 僕は今回アドバイザー的な立場で関わらせていただきましたが、PLAN OYAMAは実際に小山で暮らしている皆さん、市民のニーズだと思うんです。皆さんがこんなふうであったら良いなということを、ちょっと無理があるかもしれないけれど具体的な絵にしてみたものなので、これって世論の総体だなと。ただ、これまで小山でまちづくりをされてきた方たちからするとイメージとして違う部分もあったかもしれないですよね。でもそれはそれで折り合いをつけながら、皆さんで良いものにしていくことを目指していただきたいと思います。
阿久津 私が小学生の頃の小山市を考えると、駅前は圧倒的に活気がなくなりました。例えば駅前にある三夜通りは、当時は肩がぶつかるほど人でごった返していました。今はどうかというと、再開発などもあり駅前周辺に人が減ってきているというのが現状で、自分たちのまちですから、他人事として放っておいてはいけないと思うんです。
私がなぜこういうことに参加しようかと思ったかというと、薬剤師として駅前で薬局を営み、地域の健康に対して活動していたり、商工会議所青年部の会長や県の会長も務めさせていただく中で、小山の何かを自慢したい、話したいと思った時に、話ができる何かがないなと気がついたからです。宇都宮だったら餃子、とか、そういったものが小山には何もなくて、昔は小山遊園地があったのですが、それも今はなくなっているので、自分たちのまちとして話ができる、何か誇れることがあるまちにしていきたい。そういったことがまちづくりに目を向けたきっかけです。
このままでは小山の未来は危ういと危機意識を持っていたタイミングでPLAN OYAMAのお話をいただき、小山をもっと有名にしたい。そうなると小山のまち自体をつくっていかなければいけない。そのためには市民性も上げないといけないという意識を持つようになり、みんなでできることを模索しながら今に至っていると思います。
今はとにかく官民で連携しながらまちづくりに向き合えていることがいちばん大きく、そのことで少しずつまちが動き、若い人たちもお店を出してくれる機運が生まれ始めています。そんな動きを私たちP.O.P.ができるだけサポートしていきたいと思っています。
嶋田 これからPLAN OYAMAで提案したまちの姿が少しずつ小山市の新たな風景となり、皆さんにとって「これが自分たちのまち」と誇っていただけるものになってくれることを楽しみにしています。ぜひこれからも官民が連携してチャレンジを続けていただきたいです。
text by mitsue Nakamura