2023.06.26

リノベーション

朝日湯のリノベーション

かつて銭湯だった「朝日湯」を、泉佐野市文化財保護課のオフィスへ生まれ変わらせたリノベーション

企画プロデュース・プロジェクトマネジメント・設計・監理・運営事業提案

「朝日湯リノベーションプロジェクト」は、元々銭湯として使用されていた建物を、大阪府泉佐野市の文化財保護課のオフィスへリノベーションしたプロジェクトです。

大阪府泉佐野市にある「朝日湯」は、1995年の阪神淡路大震災によって主浴槽からボイラーへ至る湯道壁面の御影石が傷んでしまい、湯を供給できなくなったことをきっかけに閉業しました。

近代和風建築及び数奇屋建築の要素が見られる外観や脱衣室を持ち、かつ浴室はヴォールト天井でありアールデコ様式を感じ、内外部で異なる様式が魅力的な銭湯でした。

このプロジェクトにて、らいおん建築事務所は、企画・設計・施工監理、それに付随する法適合・改修コスト調整などを担当しました。そして泉佐野駅周辺でリノベーションまちづくりを行なっているVRS(バリュー・リノベーションズ・さの)主催のリノベーションまちづくり実践塾が開催され、らいおん建築事務所は、企画運営・講師の立場として携わっており、このワークショップでは、銭湯物件の活用をテーマに行われました。

このワークショップをきっかけに、オフィスの移転のため泉佐野駅周辺で物件を探していた、文化財保護課の中岡さんから、文化財の活用方法や新築案件とともに「朝日湯をオフィスとして活用することはできるか」という相談をいただきました。

文化財保護課のオフィス側には、銭湯らしいペイントアートを施しました。泉佐野市の名産物や観光地をイラストデザイナーの加藤文子さんが描いてくださいました。オフィス部分は既存の浴槽を残すため、木軸で床上げをしています。もう一方の元浴室は、ベンチシートを設置して、浴槽内に座れるように浴槽をそのまま残してインテリアとして活用しました。

もともと女湯として使用されていた部分は、高性能なパソコンを使用できるシェアオフィスおよび、会議をおこなったり既存の浴槽へ腰掛けて映像を視聴したりできるプロジェクタールームといったシェア空間になりました。

シェアオフィス部分は、時間貸しで運営し子育て中のお母さんたちのママ友会の開催や、高性能パソコンを使用したパソコンスキルアップのためのレクチャーなど、地域の方々が使用できるコンテンツに対応できるように計画しました。

プロジェクタールームでは、利用者が持参した映像資料を鑑賞できるように、高性能なプロジェクターやスピーカーなどの音響設備を整えており、浴室であった空間に映し出される映像は迫力満点です。自分のお気に入りの映画や音楽を楽しめる空間で、趣味の時間を楽しんでもらえたらと思います。

そのほか朝日湯の外部の照明を整備し、看板を照らすスポットライトと既存の照明を活用した外部照明を設置しました。改装後は、外部の照明により夜間の時間帯も明るく、周辺を歩く地域の方々から「道が明るくなった!」と反響をいただいているようです。

元脱衣室のロッカーや下駄箱といった、素晴らしいポテンシャルのある空間で、元々の用途であった銭湯の味わいを楽しんでもらえる場所となればと思います。

 

備品搬入前の様子

竣工年:2022年10月(リノベーション完了時)
場所:大阪府泉佐野市
用途:事務所
主要構造:木造
規模:地上1階 212.37㎡
撮影:中村晃