10年間住み手がいなかった昔ながらの空き家を、若者が住める物件として生まれ変わらせたGrandma。元からの良さを生かしつつもリノベーションを施し、不動産としての収益化も実現させました。
昔ながらの木造密集地域に、単身で住んでいる高齢者も多い雑司が谷。
このような地域では災害時の危険性から、建物の建て替えや道路の拡幅、再開発といったハード面の対策が先行しがちです。それは、理にかなっている一方で、歴史を重ねた街並みやコミュニティが失われてしまう危険性もあります。
それは、90歳の家主なき後10年ものあいだ空き家となっていた物件。それをらいおん建築事務所が借地権を取得して、建物オーナーとしてリノベーションし運営をしていくことにいたしました。なかなかローンが下りない中、この考え方に共感してくださった個人の方々からの融資もあり、最終的に取得することができ賃貸住宅の経営に向けて動き出しました。
実施したリノベーションは壁や畳の張り替えなど最小限にしました。元の家の良さを生かしつつ、若者の住まい兼Airbnb物件として公開することにしました。結果、住まいとしては3組ほどの若いカップルが住み継ぎ、宿としても旅人がほっとできる好評物件となりました。
このリノベーションに喜んだのが、意外にもお隣に暮らすおばあちゃん。高齢者ばかりの地域に若い人が住むことで「見守ってもらえる」「何かあった時に頼れる先が増えた」と言うのです。まさに思い描いていたソフト面からのアプローチ、「共助」によるコミュニティの実現です。
このようにGrandmaは居心地の良い空間であると共に、地域課題の打開策を体現する場所として、現在は形を変え、定額制住み放題サービス・ADDressの拠点に活用されています。
竣工年:2014
場所:東京都豊島区
用途:住居
主要構造:木造
規模:50㎡
撮影:らいおん建築事務所