座談会
PLANOYAMAプラットフォーム(POP) 阿久津治(阿久津産業(株)代表取締役) ×飯野佳昭((株)グレイド代表)×小林千恵(ピクニックマルシェ実行委員会)×福本佳之((株)Vi Pass代表取締役)×渡邉正道(友井タクシー有限会社専務取締役)
小山市市役所 渡邊賢二(まちづくり推進課まちなか再生推進係長)×中村英慈(まちづくり推進課まちなか再生推進係)×田中雅人(まちづくり推進課まちなか再生推進係)×関高弥(まちづくり推進課長)×須郷幹雄(都市整備部長)
聞き手 嶋田洋平(らいおん建築事務所)
2
ーーPLAN OYAMA(プランオヤマ)を支えるのは人が人を繋ぐプラットフォーム
嶋田 ありがとうございます。今回僕はあまり発言しないようにしようと思っていたのですが、僕しか発言できないことをひとつお話しすると、さまざまなまちでまちづくりを計画する時、地域の市民の意見を聞くと言っても、どちらかというと団体、たとえば商店街組合や商工会議所といったところに意見を聞くことが多い。団体の利益を背負っている高齢の方々が脈々と続けてきたこと、先ほど福本さんが話されていた充て職的に意見を聞くみたいな状況があったと思うんです。昔はそれでよかったかもしれませんが、今の若い人たちがそんなやり方についてくる訳もなく、商店街などから衰退してしまうまちも多々あるように思います。
今回のPLAN OYAMA(プランオヤマ)をつくるにあたって市長や小山市の皆さんが重視していたのは、とにかく市民の意見を聞くことでした。まちを使う人たちの意見をできるだけ集める。それを1年間徹底してやりましたよね。一人ひとりの意見を拾い上げるので、並大抵ではなかったと思うのですが、それを実現してプランに反映させていく様を見て、その意気込みと皆さんの熱意と本気度がすごいなと思っていました。市民の方々の意見を幅広く聞くためにアンケートを取ったり、ワークショップを開催したりしたのですが、それをとても細かく丁寧にやっていました。
アンケートを行うにあたっては、阿久津さんがお子さんの小学校などに広くアンケートを撒いてくださったり、本当にたくさんの皆さんの意見を集める際に力を発揮してくださいました。その時の思いなど聞かせていただけますか。
阿久津 個別に特化したアンケートはありましたが、「この街がどうなってほしいか」という広く街のことを聞くアンケートは小山市ではほとんどやったことがありませんでした。小山市のまちづくりに関して民間の委員に何か相談や問いかけが行われることも今まではほぼなかったですから。なのでアンケートを行うのは革命的なアクションだったと思います。今までの小山市はお役所にせよ、商業においてもトップダウンが当たり前のまちだったんです。
綺麗事ではまちづくりはできないと分かっているのですが、それでも何かを変えていかなければいけないと思っていた中で、アンケートやワークショップというアクションを通じて、官民が一丸となって、一緒に何かをできるようになったというのがいちばん大きな出来事だったと思います。なのでアンケートをするにあたっては、そのこと自体を強く打ち出すようにしました。
民間がやりたいと思っていても市の許可が必要でできなかったり、市が何かをする場合も民間の協力体制がないが故にできないこともあって、双方の間にある壁が打ち破れなくてできないことが本当にたくさんあったように思うんです。そういうことを今後は変えていくという意味で、官民で一緒にやっていくことを目指しているのでぜひアンケートに答えてくれないか? と皆さんに呼びかけました。とにかくそんな思いとスタンスでやっていました。
嶋田 アンケートはどれぐらい集まったのでしょうか?
阿久津 約2,000ぐらい集まりました。
嶋田 たくさん集まりましたよね。実際に小学生のお子さんがいるお母さんからのお答えがすごく多くて、子育てをするお母さんたちがベビーカーで歩きにくいとか、具体的な意見が多数出ていました。
飯野さん、一事業者としてアンケートを行うに当たりどんなことを意識されていましたか?
飯野 そうですね、アンケートは私たちがさまざまな意見を知るために行っていますが、アンケートに参加してくださった人たちがPLAN OYAMAに関わったという意識を持ってくれる。そういうことが大切だと思っていました。自分自身そもそも駅周辺に住んでいる人間ではないので、駅の周辺だけでなく、もっと広い範囲でまちを考えたい。まちの外にいる人たちにもアンケートに答えてもらう方が今後のPLAN OYAMAに発展性が出てくるだろうと思い、できるだけ範囲を広げて小山市の中で駅から遠い地域の方たちにも声をかけました。明らかに駅周辺の人たちじゃないなと思う意見も出たりしていたので、幅広い意見が集められたのはよかったと思っています。
嶋田 ありがとうございます。そしてPLAN OYAMAができてから、皆さんの活動は現在どのような動きとなっているのでしょうか。
渡邊(C) まずは市役所の方から。PLAN OYAMAができ上がって、プランをつくっていただいた皆さんと一緒にこのプランが目指すところを推進し、まちづくりを後押ししていく組織作りを進めて、2023年11月22日にP.O.P.の立ち上げを行い、12月19日に小山市と連携協定を結びました。今後も官民連携してまちづくりを進めていくための体制づくりを行ったということです。
渡邉(P) それと大体同じタイミングで、城山公園というもともとお城だった場所にある公園が何年もかけて再整備されていたのですが、お披露目のイベントについてをP.O.P.で担当させていただくことになりました。2024年の4月末を予定していますが、史跡だったため工事も大変で、工期が延びていますが、公園ができたらとにかくやることになっています。夏前にはできるのではないでしょうか。
飯野 今回は私たちだけでなく、行政の方々にもたくさんPRを行っていただき、さまざまなところでPLAN OYAMAを目にすることが増えているんです。作成した小冊子はかなりの枚数を取ってもらえ、それを目にした人たちがたくさん期待してくださって、ここに関わりたいとか、面白いことをやっているよねと今まさに浸透しつつある状況だと思います。
小山市内でも商工会議所青年部の方とかあるいは青年会議所とかそれ以外にも民間の団体がたくさんあるのですが、そういった皆さんから徐々に声をかけていただき、これから何をされるんですか? という質問をされるようになっています。皆さんから大きな期待を持って注目されているのを感じています。
福本 P.O.P.のプラットフォームというネーミングはピッタリだったんじゃないでしょうか。
こういったまちづくりをやると、誰かが目立ったら誰かがやっかんでということが起きるのが常です。でもまちの中に対立の構造ができてしまうようでは意味がないと思うんです。
私たちは会社も団体もそれぞれですが、PLAN OYAMAにおいて私たちが主導するというよりは人と人、人とコトの繋ぎ役だと思っていて、それはまさにプラットフォームだなと。
小山には個々に活動されている人がたくさんいるので、そういう人たちを発掘して繋いだり、みんなに紹介したり、そんな場づくりを先導することがいちばんの役割だと思っています。PLAN OYAMAがまちづくりの先頭に立ってやろうということよりも、やりたい気持ちを持っている人や、P.O.P.に関わる人たちがここにいたら面白いとか、いろいろなことにチャレンジできると思ってくれる。私たちは常にそんなパイプ役であり、P.O.P.のコンセプトとしてそうあることが大事だと思います。
photo by megumi tange, text by mitsue Nakamura